おとぎ




二人になった。

「あず。」

「ん?」

「あの時、事故の瞬間な。
 目の前はスローモーションだった。」

秀ちゃんは、淡々と話を始めた。

「俺はゆっくり飛ばされて、
 ゆっくりゆっくり転がって、
 ゆっくりだけど止まんなくて、
 空からゆっくりバイクが降ってきて、
 避けようとしたけど体が動かなかった。
 その瞬間、終わった――と思った。
 もう俺は終わりなんだって。
 妙に納得しちゃって。
 そんな事を考える暇があるほど
 ゆっくり時が流れてた。
 やっぱ嫌だよ、諦めたくねえよ。
 医者にも言われてるし、
 俺が一番この体の現実でわかってる事
 だけど、誰にどんなにできないって
 言われたって諦めたくねぇ。
 ガキみてぇかもしんねぇけど、
 バイクが好きなんだよ。
 俺の生き甲斐だったんだよ。
 諦めるなんて・・無理だよ。」


そっか。

“生き甲斐”か・・・





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