【完】君しか見えない
うつむいたままでいると、不意に柔らかい声が耳に落ちてきた。
『俺は一度も怖いとか思ったことないけどな。
十羽のほんの一部だけ見てそういうこと言ってるやつって、損してると思う。
笑うと目が細くなって子どもっぽくなるとこも、おいしいもの前にした時のキラキラになるとこも、涙脆いからすぐ潤むとこも、俺いろんな十羽の顔知ってるから』
『楓くん……』
隣を見れば、楓くんは真剣な瞳を私に向けてくれていた。
そして。
『これ、幼なじみの特権なのかもな』
そう言って、ふわりと楓くんが笑った。
何度も見てるのに、何度だって綺麗だって思っちゃう。
楓くんが笑ってるだけで、世界が救われちゃう、そんな気持ちになる笑顔。
……あ、好き。
なぜか突然、前触れもなく強く心の底からそう思った。
私は、この幼なじみが、好きなんだ。
楓くんのことが好きなんだって、自分の気持ちに名前を見つけたら、それは驚くほどストンと胸の中に落ち着いて。