【完】君しか見えない
この辺りは田舎だから、街に出る道は一本しかない。
だから高校に行くためには、必然的にこのバス停を通りかかることになる。
ここにいれば、楓くんは来るはずだ。
「うぅ、寒い……」
バス停の横に立ち、体を縮こませながら楓くんを待つ。
小さい頃の楓くんは、私のことをカイロみたいだって言って、冬になると手を離してくれなかったっけ。
楓くんは覚えていてくれてるのだろうか、そんな日のことを。
はぁ、と吐いた透明な息が空気中に消えていく。
何度思い浮かべたかわからない楓くんの顔を、もう一度頭の中で思い浮かべた、その時だった。
サクッ……
落ち葉を踏みしめる音が耳に届いた。