【完】君しか見えない






「お、おはようっ」



「あ、やっと起きたかよ、ねぼすけ」



数分後。


今起きたことを装って、噛み噛みながら目覚めの挨拶をする私。



だけど実際は、あの後目が冴えて一睡もできなかった。



でも起きていたことがバレないように、しばらく寝たフリをしていたのだ。



「そろそろ帰るか」



「うんっ……」



楓くんの声に引っ張られるように、後をついて歩きだす。



どうしよう、顔赤くなってないかな……。



あんなことがあった後に、動揺を隠してなにもなかったように振る舞うのは、なかなかに難しいことだ。



でも、楓くんはなにごともなかったかのように、いつもどおりで。



緊張のあまり隣を歩くことすら憚れて、楓くんから少し遅れて歩く。

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