【完】君しか見えない


「突然いなくなってんじゃねぇよ!
なんでなにも言わずに引っ越してんだよ!
連絡も取れねぇし!」



「ごめん……」



怒りの声をぶつけてくる楓くんに、私はただ謝ることしかできなくて。



中学生の私は、直接別れの言葉を告げる勇気を持ってなかった。



突然いなくなる、なんて、楓くんには一番やってはいけないことだったのに。


それを私はだれよりもわかってたはずなのに、勇気が出ず別れを告げることから逃げたせいで、楓くんを傷つけてしまっていた。



うつむき項垂れていると、ため息が降って来たと同時に楓くんの両手が伸びてきて、私の頬をふわりと包み込んだ。



そして、そのまま上を向けさせられる。



それに従うように視線をあげれば、そこには拗ねたような楓くんの顔。



「ちゃんと顔見せろよ」



「う、ん」

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