【完】君しか見えない


「か、楓くんも早いね?」



だって、約束の時間までは15分もある。



すると、楓くんはフッと目元を緩めた。



「当たり前。十羽とのデートなんだから」



「……っ」



ああもう、楓くんが甘すぎる。



意思表示、こんなにストレートだったっけ……。



見上げていると、楓くんの瞳を縁取る長い睫毛がすごくよく見える。



なんでこんなにかっこいいかなぁ、楓くん。



「さ、そろそろ行くか」



腕から私を解放しながら、楓くんが声を上げた。



「ねぇ、どこ行くの?」



「ん、着いてからのお楽しみ」



そう言って、いたずらっ子みたいに笑ったかと思うと、歩きだした楓くん。


私も慌ててその後を追った。
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