【完】君しか見えない
そんなことを思っていてくれたなんて……。
嬉しいのに、今までで一番幸せな瞬間なはずなのに、私は耐えられなくなって俯いていた。
混乱する頭の中で必死に言葉を見つけ出し、咄嗟に口から出たのは拒否の言葉。
「でも、楓くんには私なんかよりいい子が……」
だって、私は……。
その時、楓くんの手が私の頬を両手で包み込んで、上を向けさせられた。
顔を上げた私は、楓くんの表情に思わず目を見開く。
「楓く──」
視界いっぱいに映った楓くんは、眉尻を下げて泣きそうに笑っていた。
「十羽は、嘘が下手だな」
「……っ」