【完】君しか見えない


楓くんにそう言われて、断る選択肢なんてあるはずがなかった。



心に広がるのは、恐怖心に勝る信頼感。



私はぎゅっと下唇を噛みしめると、柵を蹴り、宙へ身を投げ出した。



その体をふわりと抱きとめてくれる腕。



飛び降りた勢いでトン…と楓くんの肩に顔が当たった瞬間、甘い香りがふわっと鼻腔をくすぐった。



女ものの香水の匂い。

私が知ってる、大好きな楓くんの香りじゃない。



さっきの……女の子の匂い、なのかな。



そう思うと、ちくりと胸が痛む。



なんとなく、手を伸ばしても届かないほど遠くに行ってしまったかのような感覚を覚えて。

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