【完】君しか見えない
そして、クリスマスイブ当日。
早朝のうちに家を出て、準備万端の状態で駅へ続く道を歩く。
都会とはいえ、こんな早朝に歩いてる人は少ない。
足を進めながらも、それと比例するように鼓動が忙しなくなっていく。
……あぁ、どうしよう。
緊張してきた。
今日、楓くんに会えるんだ……。
実感がわかなくて、足元が浮いているような感覚。
会って一番に、なんて言おうか。
相変わらずかっこいいんだろう、背もあれからまた伸びたんだろう。
そう思うだけで、胸が高鳴る。
今日は、楓くんの大好物のハヤシライスを作ってあげるつもりだ。
楓くん、笑ってくれるといいな。
記憶の中の楓くんが笑い、思わず顔をほころばせた時。
──キキーッ
突然背後からけたたましいなにかの音が聞こえ、反射的に振り返った次の瞬間、凄まじい衝撃とともに目の前が真っ暗になった。