【完】君しか見えない






「楓〜! 今日もイケメンすぎる」



「はは、ありがと。
リナさんも今日も美人だね」



「ちょっと、かーくん!
明日こそ、私と遊んでよね!」



「ごめんねーサキちゃん、先約入っちゃってて。
でも明日はちゃんと空けとくから。
俺ん家でいーよね?」



……あれ。

なんだ、楓くん楽しそう。



窓の外から身を隠すようにして教室の中を覗いた私は、唇をへの字に曲げた。



身を隠しているのは、人から見えていないとはいえ、この状況に慣れず、なんとなく堂々と学校の中に入るのが憚れるからだ。



今朝事故に遭い意識不明の重体となった私は、生霊になっていた。

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