【完】君しか見えない


久しぶりに訪れた楓くんの部屋は、全然変わっていなかった。



2年前のまま、無駄なものがなくて片付いている。



ベッドに歩み寄り、楓くんの顔を見下ろすと。



不意に、月の光に照らされて楓くんの頬でなにかが光ったことに気づいた。



キラリと光ったもの。

それは、涙だった。



楓くん、泣いてる……?



どうして、そう思った時。



「十羽……」



不意に、楓くんが私の名を呼んだ。



「──よ……会いてぇよ……。
いつ戻ってくるんだよ……」



「……っ」



思わず言葉が詰まる。



鼓動が騒がしくなり、胸が締めつけられて、一瞬呼吸の仕方を忘れた。



「楓、く、」



うわ言のように声が洩れる。


と、その時、視界の端でなにかがキラッと光り、そちらに視線を彷徨わせると、楓くんの机の上に置いてあった写真たてを見つけた。

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