【完】君しか見えない
疑問ばかりが浮かぶものの、確認のしようがないまま放課後になった。
昼間先約があると女の子と言っていたのに、なぜか自宅に直帰する楓くん。
その後をついて行き、1階にある楓くんの部屋を窓の外から覗くと、少し経って楓くんがちょうど自室に入ってきた。
そして電気もつけず、窓際のベッドへ背中から倒れるようにその身を投げた。
額に腕を当て目を閉じていた楓くんは、そのまま寝てしまったらしい。
その寝顔を窓の外から見つめながらふと、気づく。
楓くん……ひとりだ。
クリスマスイブの今日、楓くんはひとりだった。
無性に、楓くんに近づきたくなった。
鍵が空いていたから、そっと窓から部屋の中に侵入を試みる。
「失礼しまーす」
小さな声で一応ちゃんと挨拶はして。
昔、よく両親には内緒でこの窓から楓くんの部屋に遊びに来ていたから、簡単に入れた。