【完】君しか見えない
「あ、そうだ、十羽。
アドレス教えろよ」
「えっ?」
ふと思いだしたように、楓くんが話を切り出した。
「俺知らねーじゃん、十羽の連絡先。
なにかあった時、連絡先知らなかったら不便だろ」
そう言ってスマホを取り出そうとする楓くんを、慌てて制する。
「待って!
私、ケータイ持ってない……」
「はぁ? このご時世、ケータイ持ってないなんてことあるかよ」
「いや、持ってはいたんだけど、壊れちゃってて……」
「まじかよ。信じらんねー」
頬杖をついて呆れを通り越した表情の彼に、私は頭をかきながら謝る。
「へへ、ごめん」
「ったく。じゃ、手出して」
「手?」
なんで?と首を傾げ、状況を把握しきれないまま差し出した私の手首を、楓くんが掴んだ。
そして、胸ポケットから取り出したペンで、サラサラと手の甲に数字を書き連ねていく。