【完】君しか見えない
不意の言葉に、俺は思わず隣の十羽を見た。
十羽は、覚悟の決まったような瞳で正面を見据えていて。
クリスマスイブ。
それは、俺たちにとって特別な一日。
正確に言えば、俺にとってなんだけど。
「おばさんの代わりに私が楓くんの隣にいるって、そう約束したのに。
隣にいられなくてごめんね」
悲しみと罪悪感に染まった十羽の声。
──12年前のクリスマスイブ、幼稚園から帰ると、母さんがいなくなっていた。
母さんは、男と出て行った。
父さんと俺を残して。
まだ5歳だった俺の心を支えたのは、十羽だった。
『かえでちゃん、とわがずっと一緒にいてあげる。
かえでちゃんが悲しいときは、その分とわがとなりで笑っててあげるからね……っ』
あの日──忘れたくても忘れられない12年前のクリスマスイブ。
小さな腕を回して俺を抱きしめそう言った十羽の声が、頭のどこかで再生される。
俺より泣きじゃくってるくせに、気丈に振る舞って。
そんな幼なじみが、いつでも俺の隣にいた。