【完】君しか見えない
「……え?」
轟く雷鳴の中、差し込む一筋のようにその声だけは、しっかりと輪郭を持って聞こえた。
今、聞けるはずのない声。
でもたしかに聞こえて、私は耳を抑えたまま反射的に顔を上げていた。
「楓くん……。
なんでここに……」
ドーム型の遊具の入り口に手をつくようにして、楓くんがそこに立っていた。
楓くんが、なんでここにいるの?
声にならない疑問が、心の中で渦巻く。
楓くんは走ってきたのか、服も乱れ、肩で大きく息をしていて。
こんな余裕ない楓くんは、見たことがなかった。