【完】君しか見えない
「急にいなくなるなよ、ばか。
まぁ、雷鳴ってきたから、どうせここで縮こまってるんじゃないかとは思ったけど」
「雷が嫌いだってこと、覚えてくれてたんだ……」
「当たり前だろ、幼なじみなんだから。
雷が鳴ったらここに来ることだって、覚えてる」
さっきはあんなに遠かった距離が、楓くんのその言葉だけでぐんと近づいた気がした。
ぎゅっと胸が掴まれて、ツンと鼻の奥が痛んで。
でも私は、今にも我先にと溢れそうになる涙をこらえて笑った。
「もう、相変わらず心配性だなぁ、楓くんは〜。
雷苦手だったけど、もう克服したよ!
だから、私は大丈夫。
楓くんは女の子のとこ行ってあげて?」
楓くんが来てくれて嬉しい。
でもやっぱり、楓くんの邪魔はしたくない。
だって私は──、
すると楓くんが私の目の前にしゃがみ込み、折り曲げた人差し指でゴツンと頭を小突いてきた。
「ばか。こんなに震えてなにが大丈夫だよ。
もっとマシな嘘つけよ。
それにおまえに気遣われるほど、女に困ってねぇわ」
顔をあげれば、ムッとしたような表情の楓くん。