【完】君しか見えない
「ほら、耳こうしててやるから」
目に映る目の前の楓くんの表情はいたってクールなのに、耳に触れる手はあまりにも優しくて。
あぁ、やっぱり楓くんには敵わない。
あんなに私の心を乱していた雷鳴なんか雑音にして、楓くんの声だけがまっすぐに届いてくる。
「ありがとう。
楓くんの手、あったかい」
涙が出そうになるくらい、温かいよ。
冷たくなった私の体すら、こうして温めてくれるんだね。
私の心を優しく撫でてくれるような温もりは、あの頃からなにひとつ変わらなかった。