【完】君しか見えない
「でも、あの女の子に点灯式誘われてたんじゃ……」
「断ったに決まってんだろ。
今日の先約はおまえなんだから」
参ったな。
さっきまでとは違う涙がこぼれそうになる。
「楓くん、ありがとう……。
本当は来てくれて、すごく安心した」
泣きそうになりながらお礼の言葉を口にすると、楓くんが目を伏せた。
「当てにすんなよ。
俺はおまえが困った時、助けに行けねぇから」
そうつぶやく楓くんの声音には、突き放す、そんな意思が見えた。
そんな様子をわかっていながらも、私は微笑んだ。
「でも、今日こうやって来てくれた。
それだけで十分」
と、その時。
突然、ガッシャーンとガラスの空を割るような雷鳴が轟いた。
「きゃっ……」
思わず叫んだ時、なにかに遮断されたかのように雷鳴が途切れた。
恐る恐る目を開けば、楓くんの両手が私の両耳を塞いでいてくれていた。