円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
トーマスは、アメリカ人らしい
開放的な明るさを持った青年だった。
背も高くて見栄えもよかったから、
舞踏会の会場に入って来た時には、
女性の視線を一手に引き付けて、
彼と踊りたいという女性もたくさんいた。
ブラッドリー邸の重苦しい、
ヨーロッパの空気が立ち込める
貴族の屋敷に滞在していて、
トーマスも、その古臭さにだいぶ
飽きてきたところだった。
舞踏会というのは、
まるで別世界のように建物も人も、
様変わりして華やかな
雰囲気に包まれていた。
彼は、こういう雰囲気が嫌いではなかった。