円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~

トーマスは、
持ち前の明るさを発揮して、
誰だろうと身分の区別なく、ホールにいる人たちに話しかけて行った。

ブラッドリー卿も、
アメリカの青年に、
ヨーロッパの社交のしきたりを、伝える必要があると思っていた。

だが、彼が忠告しようと思って、
話しかける前にトーマスは、
レイランド伯爵夫人に、握手を求めに行ってしまった。

伯爵家の屋敷に着いて早々に、トーマスは失敗を犯してしまった。


この行為は、プルームズベリーでの彼の運命を決定づけた。

伯爵夫人は、少し微笑んだだけで、
彼のことを、まるでその場にいないかのように扱った。

これ以上ないというくらいに
冷たい扱いを受けてトーマスも、
ようやく、自分が失態をやらかしたことに気が付いた。

上流階級になると、
挨拶一つにでも作法がある。

爵位を持つような身分の高い人と、
面識を得るには、間に誰か紹介者を立てなければならない。

伯爵家のような身分の高い人たちに、いきなり話しかけてはいけないのだ。
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