円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~

トーマスは、会いたいと思う人が
いたなら、まずブラッドリー卿に
仲介を頼んで、彼の口から紹介をしてもらわなければならなかった。

もっとも、ブラッドリー卿は自ら申し出るほど、気を使う人ではない。


トーマスも姉のリディアも
舞踏会に来て、同じようにものの数分で、無作法ものというレッテルを貼られてしまった。

始めは物珍しそうに寄って来た人たちも、伯爵夫人が、まるで
無視するように彼を扱うと、
潮が引くように、姉弟の周りからいなくなった。

舞踏会に来た時と打って変わって、
姉弟には、だれも話しかけて来なくなった。


次の日には二人とも、舞踏会というものは、まるでつまらないと思うようになっていた。


そこへ、新しい昨日まで顔を見なかった
きれいに着飾った女性が現れたので、

トーマスは、無視されてもいいやという気持ちで、臆せず彼女に近寄って行った。

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