円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
「いいえ。そんな約束してないわ」
「ブラッドリー卿以外にも?」
「ええ。なんの約束もしていないわ」
「よかった。
さっきから、そればっかり
考えていたんだ。じゃあ、君には
決まった人はいないんだね」
彼は、エリノアの手をつかみ、
そっとキスをした。
「トーマス?」
「僕の家族は、アメリカで
いろいろ事業をやっている。
もちろん、農場もいくつか持ってるよ。
プランテーション農園って聞いたことはある?」
「ええ。少しだけ」
「かつては、かなりの規模だったけどね。
戦争があったから、その後は、
だいぶ農場の規模は縮小したけど。
今は、綿織物産業や衣料製造業につなげていって、そっちでも成果を上げている」
「そうなの?向こうでは、
何を作ってるの?」
「綿花に小麦、それにトウモロコシ。
他にもいろいろ作ってるよ」
「本当に?今年の出来は?
たくさん収穫できた?」
エリノアは、ここでも共通点を見つけて、嬉しくなった。
「ああ、悪くないと思うよ。
僕は数字の報告しか受けてないけど」
「畑ってどのくらい持ってるの?」
「正確には分からないな。
なぜそんなこと聞くの?
君は、そんなことに興味があるの?」