円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
エリノアは、使用人用の階段を
降りていき、殺風景なリノリウムの
廊下をキッチンの方へ歩いて行った。

昨日の夜、真っ暗な中、
歩いて行ったのと同じだった。

ここで使用人として
働いている時は、
ランドリールームとメアリーの
部屋との往復でキッチンには、
足を踏み込めなかった。

階下の使用人たちは、
それぞれ役割があり、
どの仕事も細かく仕事の持ち場が決められている。

忙しく階段を行ったり来たりする
彼らの横で、とてものほほんと
見学できる雰囲気ではなかった。

でも、今日は
レディの格好をしている。
メイドと違って、
間違ってこの場所に足を踏み入れても、
頭ごなしに怒られることはない。

後で、伯爵夫人に一言、
言われるかも知れないけど。


伯爵家のキッチンは、
イギリスから取り寄せたキッチンで、
横には、ずっと前に作られた古い暖炉がついている。

大きな木の作業台が
でんと真ん中に置かれ、
ここで様々な料理が作られる。

みんな何ごともなく
作業を続けているけれど、
昨日は、ここで
トーマスとミーガンが抱き合っているのを見た。


あの時は、
暗くて様子が分からなかった。


キッチンの奥には、
コンロが付いた、一体型の大きなオーブン。

様々な道具が使用され、
流れるように作業が進められていく。

伯爵家の専属コック以下、
キッチンメイドとスカラリ―メイド
(野菜の皮をむいたり、下ごしらえするメイド)が忙しく働いている。
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