円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~


「出て行った?トーマスが?
どこに行ったんだ?」


「わからない」

「何でわからないんだ?
馬車で行ったんだろう?」


「うちの馬車じゃないから、
行き先なんかわかるか」
ウィリアムは、投げやりに答えた。


「どういうこと?じゃあ、誰の馬車で出かけたの?」

エリオットは、聞けば聞くほど
話が見えなくなって、頭を抱えた。

「エリノアだ……
彼女がトーマスを商談中に呼んで、
二人で馬車に乗って行った。
駆け落ちしたのかもしれない」


「なんだって!!お前、何やってんの。
どうして止めなかったの?」


「僕に何ができる?
駆け落ちしたいと思ったほど、
やつのことが好きなんだろう?
どうして止められるんだ」


「君は、バカなのか?
エリノアがそんなことする娘に
見えるのか?
誰にも何も言わずに、親にだって
黙って、会ったばかりの男と、
駆け落ちするような子に見えるのか?」


「だって、現にそうしたじゃないか?
そういう娘じゃないって
どうして言える?」

「まったく、何やってるんだか。
とにかく、まだそれほど時間は経って
ないんだろう?
だったら、すぐに取り戻せ。
周りの噂になったら、
エリノアの将来に関わる。
何してるんだ。早く追いかけろよ。
馬車ならそのうち追いつくさ。
僕の馬を使えよ」


「エリオット……」


「何か、事情があったんだろう。
彼女を捕まえてちゃんと話を聞いてやれ」

「ああ、わかった」
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