円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~


「気付かない振りをするには、
遅すぎたようね」

エリノアは、わき目もふらずに、こっちにやってくる優雅な従兄を見て言った。

「あら、どうしてそんなに彼を目の敵にするのエリノア?
ウィリアムは優しくて、とっても思いやりのある方なのに」

エリノアは、姉の方に体を向けて言う。

「メアリー、それはあなたが、人の悪いところを少しも見ようとしないからよ。
彼が優しいのは、お金と、お金を生む出しそうな相手にだけ。

急に雨に降られたから、雨宿りしに屋敷に寄っただけよ」

あるいは、馬の訓練中に急に雨が降られたとか。


「そうじゃないと思うわ、エリノア。きっと、別の用事に違いないわ」


「別の用事って?」


「伯爵家の晩餐会の」

エリノアはため息をついた。

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