円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
「彼が、食事の席に混ざったりしたら、
今日の献立を、フルコースのメニューに
全部取りかえるってお母様、言い出すわよ」
エリノアは、ため息交じりに言う。
母は極端に、
従兄のウィリアムのことを意識していた。
彼に娘のうちのどちらかを、
気に入ってもらいたい一心で、ウィリアムのことを無視出来ないのだ。
メアリーが困り果てて言う。
「でも、エリノア、ウィリアムに
そんな失礼なことできないわ」
「失礼なことって?
ここに立ち寄って食事をするつもりなら、
少なくとも、前の日には教えて欲しいわね。
お母様は、彼が侯爵家で
フランス人のシェフを雇って、
豪華な食事をしてるって思いこんでるんですもの。
ジャガイモを出すのは、
とても勇気がいると思うわ。
そんなの、お母様には無理よ。
ウィリアムが、今頃になって
訪ねて来たなんて、
お母様が知ったら、
献立を全部作り直すって言い出すわ。
そんなもったいないことできない」
メアリーは、妹に押されて、はっきり自分の意見が言えなかった。