円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
「エリノア、あなたが
ウィリアムを説得しては?」
メアリーは、いい考えが浮かんだと思って、
エリノアを見た。
彼女は、姉を無視した。
「人を説得するのは、
あなたの方がよっぽど上手だもの。
私はこういうの、
からっきしダメなの知ってるでしょう?
すぐにウィリアムに、
言いくるめられてしまうもの」
エリノアは、微笑んで姉を見た。
「大丈夫よ。何とかなるわ」
ウィリアムは、頻繁にここへやってくる。
いつ頃からだろう。
こんなにやってくるのようになったのは。
ただの客人なら、家族と同じ食事を出せばいい。
母は、必要以上に彼の反応に敏感になって、
料理を彼の好みに作り変えようとしてしまう。
お昼過ぎにふらっとやって来て、
夕食まで時間がないというときに、
食材の調達から始めなければならない、
使用人の苦労も尋常ではない。