円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
メアリーはウィリアムに対して、
いつも通り、握手の時に
両ひざを折って敬意を示す
(カーテシーという)挨拶をした。
メアリーは、いつも決められた通りに
挨拶をこなす。
それに対してエリノアは、
使用人のように腰を落とさず、
ぺコンと頭を下げる儀礼的な挨拶をして、ずっと下をむいていた。
ウィリアムは、従姉妹のエリノアの様子に目が釘付けになっていた。
彼は、林を抜けてからすぐに、
畑にエリノアがいることに気がついた。
彼女は、昔の、着古したドレスを着て、
顔は、真っ赤に日焼けしていてる。
ずっと農作業しているのだから、
日に焼けた顔が赤くなるのも当然だ。
畑にいたのだから、汚れてもいいように、古いドレスを着ているのも
真っ当なことだ。
だから、メアリーのように普通に
挨拶してくれれば、
そのまま通り過ぎたのに。
なのに、なんだ?
今の、使用人のまねは。
彼はそう口走りそうになったが、
思いとどまった。
彼は、エリノアが無器用に
使用人の真似をするのを見つめていた。
どうしたというのだ?
何か、楽しい余興でも始める気か?