円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~

メアリーはウィリアムに対して、
いつも通り、握手の時に
両ひざを折って敬意を示す
(カーテシーという)挨拶をした。

メアリーは、いつも決められた通りに
挨拶をこなす。

それに対してエリノアは、
使用人のように腰を落とさず、
ぺコンと頭を下げる儀礼的な挨拶をして、ずっと下をむいていた。



ウィリアムは、従姉妹のエリノアの様子に目が釘付けになっていた。

彼は、林を抜けてからすぐに、
畑にエリノアがいることに気がついた。


彼女は、昔の、着古したドレスを着て、
顔は、真っ赤に日焼けしていてる。

ずっと農作業しているのだから、
日に焼けた顔が赤くなるのも当然だ。

畑にいたのだから、汚れてもいいように、古いドレスを着ているのも
真っ当なことだ。


だから、メアリーのように普通に
挨拶してくれれば、
そのまま通り過ぎたのに。


なのに、なんだ?

今の、使用人のまねは。

彼はそう口走りそうになったが、
思いとどまった。


彼は、エリノアが無器用に
使用人の真似をするのを見つめていた。

どうしたというのだ?

何か、楽しい余興でも始める気か?
< 24 / 195 >

この作品をシェア

pagetop