円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~


「どうぞ、本当にお気遣いなく。
特別な用意は、何も必要ありませんから」

ウィリアムは、わざと
エリノアに聞こえるように
大きな声で言う。

エリノアは、下を向いて従兄に
聞こえないように呟いた。


「そんなわけにはいかないじゃないの」


ウィリアムは、地元の名士だった。

偉い貴族様で、大地主で、
彼の気に食わぬことをして、
ご機嫌を損ねるわけにはいかない。

せっかく、訪ねて来てくれた
というのに、従兄様を粗末に扱っては、
家の評判に関わるんだもの。

『家の評判に関わる』確かに。

ジャガイモが無駄になるより、
はるかに重要で由々しき問題だ。
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