円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
エリノアは、部屋に戻る途中で、
母がコックのローザと話しているのを
目にして、立ち止まった。
そして、母を呼んで、辛そうに、
うつむきながら言った。
「お母様、今日は一日中、
外に出ていたせいで、
頭がくらくらするの。
今日は侯爵様がいらっしゃるけれど、
お部屋で休んでいてもいいかしら?」
「まあ、ひどいお顔。
具合が悪いのかい?」
母は日焼けした赤ら顔を、
具合の悪いせいだと思ってくれたみたいだった。
エリノアが、熱で顔が熱いのかと
誤解した母は、心配そうに、
エリノアの額にさっと手を伸ばしてきた。
エリノアは、寸でのところで身を引くと、
「幸い熱は出ていないんです。
ご心配なく。ちょっと
日に当たりすぎただけですから」
と言って控えめに頭を下げた。
「わかったわエリノア。
ウィリアムに伝えておきますよ。
それにしても、ひどい熱じゃないの?
お医者様を呼ばないと……」
「大丈夫です。すみません。
寝る前によく冷やしておきます」
「そう、それがいいわ。
今日は、ゆっくり休みなさい」
「ありがとうございます」