円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~


中に入るとエリノアは、
静かに窓辺に座って月を見ていた。

アリスは、
邪魔しないようにそっと近づいた。


「お嬢様、ウィリアム様が、
ドアの外でお待ちになっておられますが、
いかがいたしましょう?」

「入ってもらえばいいじゃないの。
何を遠慮してるの?」

「ええ、お言葉ですが、エリノア様、
お顔のことは、
お忘れでいらっしゃいますか?」

「もちろん忘れていないわよ。
そうだ。いいこと考えたわ。

そういえば、そろそろ時間じゃない?
こんなのが、
本当に効き目があるとは思えないけど」

「お顔についたもの、
すぐにきれいにしますから」

「ちょっと待って。このままでいいわ。
ウィリアムがいるんでしょう?
ちょっと、脅かしてやりましょうよ」

アリスは戸惑った。

仮にもウィリアムは、貴族である。
身分も高く、十分なおもてなしをし、
重んじられなければならない。

そうすべき人間だというのに、
そういう人間をつかまえて、
脅かすって言われても。

困ってしまう。
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