円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
「日に当たった?」
ウィリアムは、
自分の目で見たと言うかわりに、
「君のことだから、
今日のような天気のいい日は、
ずっと外にいたのでしょう」
と言いそえた。
「まあ、そんなところよ」
ウィリアムは、
さっと部屋の中を見回し、
そばにいたアリスに視線を向けると、
「その分だと、
エリノアの具合は悪くなさそうだな」
といって、ほっとした。
アリスは、
「お顔が少し赤いくらいで、
他は何ともありません」と答えた。
ウィリアムは、
少し真面目な顔をして言う。
「人前に出られなくなるなんて、
愚かだとは思いませんか?」
彼は、笑ってしまいたくなるのを
必死に抑えて言う。
「はい」
「じゃあ、疲れてるだろう。
ゆっくりおやすみ。エリノア」
ウィリアムは、
そう言うと静かに部屋を出て行った。
ウィリアムが部屋を出て行ってから、
エリノアはアリスに言った。
「拍子抜けしたわ、アリス。
ウィリアムは、もっと驚くと思ったのに」
アリスは、顔に塗ったオートミールを
はぎ取るのに集中していたから、
「さようでございますね」
とうわの空で答えた。