円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~

「心配されてるのは、
間違いないと思いますよ。
わざわざ、ここまで様子を見にいらっしゃったんですから」

アリスは、きれいになった
エリノアの顔に傷が出来てないか、
入念にチェックした。

「そうかしら?」

きちんと手入れをして、
美しく見えるように工夫をすれば、
決してメアリーに見劣り
しないというのに。

エリノアはさっぱり、
そっちの方に興味を示そうとしない。


「お嬢様は、ウィリアム様のどんな
反応をご覧になりたかったのですか?」

アリスが不意に口にした。


彼女は、無駄口をたたくような
性格ではない。

普段なら、エリノアの髪の毛についた
細かな汚れを落とす作業だけに
集中していた。

今日はちょっと疲れていたし、
細かい作業が多くて、それで、
口の方がおろそかになり、つい口走ってしまったのだ。



「もっと驚けばいいのに。
びっくりしたって」

エリノアの方は、
アリスに一方的に話しかけるので、
思わぬ答えが返って来ると、
嬉しいと思った。

アリスは続ける。

「ウィリアム様は、
びっくりして、
驚いたっていう顔をしても、
何もならないとご存じなのでしょう。

そんなことをしても、
事態は一歩も進まないですから。
ああいう方は、何か問題が起こったら、
次は何をすべきか?
すぐに、そっちの方に意識が向くんです」
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