円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
だが、アリスは、仕事のことだけを
心配してるのではなかった。
メイドの中には、階上の貴族や
地主の若い男に誘惑されて、
不幸にも誘いに乗ってしまって、
捨てられてしまうものもいる。
そういう男たちは、良家の子女に対しては、中途半端な真似はしない。
でも、使用人となれば話は別だ。
彼らは、可愛くて感じのいい、
気に入ったメイドの女の子を見れば、
甘い言葉で巧みに誘惑してくる。
でも、そんなことは、
舞踏会が続く間だけの話だ。
楽しい時期も過ぎてしまうと、
階上の人たちは、
何事もなかったみたいにさっさと、
自分の領地に帰っていってしまう。
そうなると、誘惑に負けたメイドは、
何の恩恵もなく忘れ去られてしまうのだ。
誤った行動の末、
万が一妊娠でもしてしまったら、
それは大変なことになる。
仕事も将来も棒に振って、
厳しい世間に放り出されてしまうのだ。
それなのに、貴族や地主の若い男は
わずかなお金を払って、
責任を果たしたことになってしまう。
そういう男たちが、良家の淑女にも、
危険だっていうのは同じこと。
過ちを犯したなんてことになったら、
例え良家の淑女でも同じこと。
一生レッテルを貼られて、
恥ずかしめを受け、
ずっと表に出ることなく、
隠れて生きて行かなくてはならない。
アリスは、そういう階上の男達の
誘惑からも、エリノアを
守らなければならない。