円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
いよいよ、出発の日が来た。
出発間近まで、行くと言い張っていた
母がようやく諦めたので、
エリノアは、メアリーと姉妹で
出掛けることになった。
エリノア達をのせた馬車が、
伯爵家の広大な敷地に入った。
馬車は、敷地の中の整備された道を
軽快に走り抜けていく。
レイランド伯爵家は、
プルームズベリーでは一番の名門、
そのルーツは何世紀も前に遡る。
ブラッドリ―侯爵家も、同じように
名門とされている名家だが、
そっちは軍人を多く輩出して
どちらかというと武骨で勇ましい
イメージがある。
ウィリアムをはじめ、
ブラッドリ―の人たちは、
舞踏会よりも狩猟の方がよく似合う。
一方、レイランド家では、
政治家や外交官などの、
優秀な人材を送り出し、国を支えて来た。
舞踏会と言えばレイランド家だ。
洗練された演出と、
格調高いプログラムは、
他家では真似ることが出来ないと
言われている。
粗雑なブラッドリ―家の人間に、
優雅な舞踏会は取り仕切れまい。
というのが、レイランド家の人の誇り
だった。
というのも、はるか昔、
王侯貴族たちの戦勝を祝って
繰り広げた大宴会が
舞踏会の原型といわれている。
ブラッドリ―家の将軍が、
戦場で名を上げるかわりに、
戦場では劣勢だった
レイランド家の人々は、
舞踏会を取り仕切る。
だから、伯爵家の舞踏会は
気合が入っている。