円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~


「ねえ、ジョン、
さっきから全然進んでないんですけど」

待つこと数十分。

入口のところに居る屋敷の人も、
荷物をチェックするとか、
何かするわけでなく、
ただ荷物の列が伸びていくのを立って、
眺めているだけである。


「ああ、こりゃ最悪だな」


「何が最悪なのよ」

ジョンは、周りを見てから言う。

「侯爵様がまだ到着していない」

「ウィリアムが?」

「ああ、そうだって。
さっき顔見知りの御者に聞いた。
侯爵家の馬車がまだ着いてないって」

「侯爵家の馬車が着いてないと、
何がいけないのよ」

「荷物がさばけない」

そんなこと、宇宙の常識だろうって
いう顔でジョンが答える。

「どうして、荷物がさばけないのよ。
先についた荷物から順に、
さばいていけばいいじゃないの」

「そうはいかないんだよ。
なにしろ順番があって、
何でも偉いさんから始めなきゃいけない」

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