円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
「くだらないわね」
「まったくだ」
ジョンと雑談をしてしばらくすると、
大きな黒塗りの立派な馬車が入って来た。
立派な四頭立ての馬車には、
侯爵家の紋章が付いている。
「侯爵夫人とウィリアムだわ。
二人しかいないのに、
ずいぶん大きな馬車ね」
空間の無駄だわ。
今度言ってやらなくては。
「いいや、二人じゃなかったって
話だぜ。いつもの倍も荷物があるって」
「本当に?」
あの面倒くさがりのウィリアムが、
いったい誰を連れて行くっていうの?
馬車から人が下りて来た。
ウィリアムと侯爵夫人以外にも、
着飾った、若くてとてもきれいな
男女が二人馬車から降り立った。
「誰、あの人知っている?」
平静な様子をしていたけれど、
内心は穏やかではなかった。
自分のことではなく、
メアリーのこと考えると。
「いいや。詳しいことは知らないけど。
アメリカ人の客らしい」
「アメリカ人の?」
エリノアは母が、
この場にいなくてよかったと思った。
もし、この場にいたら
卒倒してしまうのではないかと思った。