円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
「何、言ってるの?アリス。
せっかくここまで準備したのよ。
私、まだ何もしてないじゃないの。
まだ、やるわよ、
こんなことくらいじゃ音を上げないわ」

エリノアは、「また、後で来るわね」
とメアリーに言うと、
アリスについていった。

「エリ……さま……エリノアさま」

「アリス、呼び捨てでいいのよ」

「ですが」

「エリ、だけ声に出して、
後は頭の中で言いなさい。
それなら失礼だと思わないわ。

「かしこまりました」

「ダメよ。
かしこまりましたなんて、やめなさい。
どう見ても、あなたの方が上だもの。
私に敬語なんて使ったら、
変だと思われる」

「はい」

「エリ……」

「何でしょうか?」

エリノアは、
彼女より少し背の高いアリスを見つめた。

彼女は、ずっと前から、
姉妹についていてくれている。

きりっとして賢そうないい顔をしている。

「ここは、私がやりますから、
お嬢様……のお部屋に」

「お前、じゃなくて。
あなたは、何をしているの?」

どう見ても、歳上のメイドを
お前と呼ぶのは、おかしい。

アリスにだけ、対応が変だとは、
言えないだろう。

「ええ、これから、
ランドリールームに行って、アイロンをかけておこうかと思いまして……」

「面白そうね」

「いいえ。全然、
面白い代物ではありません」

「早く行きましょう、アリス」

エリノアは、
アリスの後について階段を下りて行った。


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