円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
洗濯室は、もうもうと蒸気が
立ち込めて蒸し暑く、
その中で、ランドリーメイドたちが、
忙しそうに働いている。
洗濯おけに水をくみ、
ゴシゴシと洗濯板でこすり、
きれいになった布を今度は、
コテの部分を火で熱して温め、
布に当てアイロンをかけていた。
「アリス、
いつもお前がやってるのと違うわね」
エリノアは、アリスが手際よく
布を広げるのを横で見ていた。
「はい。これは、
フラットアイロンと言って、
コテの部分をオーブンの火で
熱して温めます。
エリノア様がいつも、
ごらんになってるのは、
箱型をしたアイロンの中に、
炭を入れて熱する底が二重になった
アイロンです」
アリスは、話をしながら器用に
アイロンをかけていく。
エリノアは、ランドリーメイドが
アイロンを持ち上げて、
器用に布の上を滑られていくのが
面白いと思った。
見てるだけじゃつまらない。
やってみたい。
「アイロン!!へえ、
それがアイロンっていうのね」
とっても面白そう。
「ダメです。とても熱いです。
危のうございますから」
「大丈夫よ、ちょっと見せて」
アリスが、アイロンを横に置いた。
「エリさま、お熱いですよ!」
「ぶふっ、お前、何言ってるの?
触らなくても、
オーブンに突っ込んであったんだから、
熱くて当たり前じゃないの」
エリノアは、アリスが
持とうとしていたアイロンを取り上げ、
メアリーの、あつらえたばかりの衣装に
押し付けた。
ズシッと信じられないほどの、
重さだった。
「うわっ、何これ。重い!」
ドンと嫌な音がした。
ジューーっと音を立てて、
アイロンは布地を焦がしていった。