キス税を払う?それともキスする?
 華は平均身長で体つきも細くもなく太くもなく。

 年中ダイエットをしているような、していないようなごく普通のOL。

 顔だって特別可愛いわけじゃないのは自分でも分かっている。

 髪は美容院になかなか行けずに伸ばしっぱなしになっているのを、ただまとめているだけ。

 ちょっと女の子をサボってるなという自覚もある。


 だから余計に南田の行動の意味を理解できなかった。

 例え目の前でキス税を嫌がっている女の子がいたとしても、南田のような人が何かするなんて。しかも自らが…。

 そこまで考えて首を振る。理解不能なのは別次元の変人だから。
 そんな人のこと考えるだけ無駄だわ。

 寝不足で何も食べる気がしなくて、そのまま家を出た。

 外では反対派のデモが行われていた。

「キス税、はんたーい!プライバシーの侵害だー!」

 華も激しく同意したかった。

 しかし周りの目は冷ややかだ。キス税を表立って反対すれば冷ややかな目を向けられる。

 何故なら、自分にはそういう相手もいないし、これからもそういう相手を作れそうにありません!
 と暗に公表しているようなものだ。

「キス税、はんたーい!」

 去っていくデモ隊のメンバーは確かに相手が作れなさそうな男の人ばかりに思えた。

 その中で同じように声をあげることはできなかった。
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