キス税を払う?それともキスする?
 ここからは計画していたことから大きく外れることになった。

「おい。奥村華。…沈黙は了承とみなす。」

 後から考えても、どうしてそうしてしまったのか。
 ただみつめられ過ぎて、つい…というのが本音なのかもしれない。

 南田はかがんで奥村と視線を合わせ、そして軽く触れ合わせた。

 くちびるを。

 ピッ…ピー。
 南田が押した機械が反応して「認証しました」と音を出した。

 それとともに南田は奥村に力いっぱい押しのけられた。

「なっ…。」

 動揺で表情が崩れそうになるのを必死で堪えた。
 そして動揺を悟られないように敢えて余計なことを口走る。

「おい。認証しないでいいのか?」

 その声は走り去る奥村の背中に虚しく投げられただけだった。
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