キス税を払う?それともキスする?
 席にいると奥村も出社してきた。
 いつものように挨拶が交わされる。

「おはようございます。」

「あぁ。おはよう。大変だったな。」

 早く僕たちのことをはっきりさせたいが、それよりもまず仕事をどうにかしなければならなくなっている。

「一昨日が全て潰れてしまった。
 僕らの仕事は認証機械とは無関係だ。
 よって納期は端的に言っても困難極まりない。
 満身創痍になろうとも完遂する必要がある。」

「あの…午前中は…。」

「寝ぼけているのか。
 飯野のじいさんにはもう伝えてある。
 君も力が及ぶ限りは全力を尽くせ。」

 もう奥村さんと協力してやっていこう。
 その方がいい。
 僕らは公私ともに言わば運命共同体なんだ。

「理解したのか?
 理解したのなら四の五の言わずに仕事を進めろ。」

 運命共同体…。

 南田は自分が思い浮かべた言葉に恥ずかしくなって素っ気ない態度で仕事に取り掛かった。
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