覚醒者3号-第二次調査報告-
小屋を破壊した瞬間、村人達は狐につままれたような気分になった事だろう。

中にいた筈の私が、煙のように消え去っていたのだから。

…数メートル離れた木陰から、小屋を包囲していた村人達の姿を見る。

私は物音を立てないように、その場から走り去った。

…テレポート。

いわゆる瞬間移動という奴だ。

私が機関の投与した薬品によって覚醒した超能力のひとつ。

瞬時にして数メートル程度の距離を移動する事ができる。

かなりの力を消耗する為に乱用は出来ないし、遠距離の移動は不可能だけど、さっきみたいに包囲された状況から脱出するのは造作もない事だった。

…それだけの能力を持ちながら、私はこの村からは脱出しようとは思わなかった。

確かにこの村に留まるのは怖い。

命を狙われる恐怖。

誰にも頼れない、四面楚歌の恐怖。

その恐怖を押し殺してでも、私はこの村で調べたい事があった。

何を…と言えるほど具体的な事ではない。

…この村には何か違和感があるのだ。

迷い込んだ者を惨殺するという人狩り村。

何故そんな村が生まれるに至ったのか。

ここの村人達も、生まれた瞬間からそんな狂人だった訳ではないはずだ。

何らかの理由があって、このような凶行をするに至った筈。

…単刀直入に言おう。

私はこの村が、機関の施設だと踏んでいた。

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