BAD & BAD【Ⅱ】
そんなこと言われちゃったら、早く帰らないわけにいかないじゃん。
私に早く会いたいって素直に言えばいいのに。
「ありがとう」
溢れ出た感謝に、痛みがどっか飛んでっちゃった。
満面の笑顔を咲き誇らせて、もう一度伝える。
「皆、ありがとう!」
皆が嬉しそうに微笑む。
電話越しでも、桃太郎が両頬を膨らませて照れ隠ししているのがわかっちゃうのは、なぜだろう。
私、神雷の一員でよかった。
仲間がいてくれてよかった。
手首の痕も善兄の脅威も抱えながら、私は“悪”に塗れた心で一笑する。
もっと強くなるであろう、明日に期待を寄せて。
「ん」
「へ?」
背後からいきなり、凛が私にヘルメットをかぶせた。
私の手を気遣って、かぶせてくれたのだろう。
「俺の後ろに乗れ」
「うん!」
ヘルメットをつけてバイクに乗った凛の後ろに跨って、ほとんど握力のない左手をかばいながら凛のお腹に腕を回す。
そんな私達に続いて、皆もそれぞれバイクに乗った。真修は朔の後ろに乗せてもらうらしい。
更けていく夜空の真下、エンジン音がけたたましく轟く。
満月が見守る中、バイクがそっと動き出した。
さあ、帰ろう。
私の、私達の、居場所へ。