BAD & BAD【Ⅱ】
全部に決着がついたわけじゃない。
だけど、絡みついていた鎖を断ち切れたのは、間違いない。
「桃太郎は今どこ?」
『洋館』
桃太郎は一人で洋館に待機ってことか。
連絡係とかやってたのかもしれない。
桃太郎が洋館にいるなら、わがままを頼んでみようかな。
「私、ケーキ食べたいな」
『は?』
「桃太郎の作る、超絶美味しいケーキが食べたいな~」
『はあ?ケーキ?』
唐突なリクエストに、スマホの向こう側はキョトンとしている様子だった。
不穏な影は通り過ぎたなら、いつも通り平凡でありきたりな日々を過ごそうよ。
ケーキを食べながらわいわいはしゃいで、騒いで、不安も心配も消えてしまえばいい。
そうしていれば、あっという間に傷は癒えて、ぎこちなさは沈んで、また見慣れた日常に彩られていく。
「ケーキが食ーべたーいなー」
『はぁ~、しょうがねぇな。作ってやるよ』
「わーい!やったー!」
『めちゃくちゃ早く作ってやるから、めちゃくちゃ早く帰ってこいよ!』
「え?早く?」
『そうだ、早くだ!ケーキができてもお前が帰ってなけりゃ、ケーキは食わせねぇからな!』
何その可愛い条件。