俺を好きになってよ。


ていうか、南はもう御守先輩のものなんだ。
いつまでも引きずりすぎだよね…。


「りっちゃん、どーした?」

「ちょっと静かにして」

「ええー!ひどー!」




それから、授業はたんたんと進んでゆき、昼休み。

私は軽く昼食をすませ、ゆうちゃんに校舎の案内をする。


「…でここが進路指導室。ある程度覚えた?」

「うん!…なんとなーくだけど!」

「まぁ、生活するうちに覚えくるよ」

そう言って私は自動販売機で買ったココアをゆうちゃんに渡す。

それを受け取るとゆうちゃんが微笑んだ。

「…なんか、懐かしいね…ココア」

「確かに!ゆうちゃんが泣いてる時に必ずココア渡してたし!」

小さい頃、ゆうちゃんが家に遊びに来てた時。
渚月とオモチャの取り合いをしてて、じゃんけんで決めたけど結果ゆうちゃんが負けちゃって。

そしたらゆうちゃんが泣きはじめたから、その時の私は凄く焦ってた。

なんとかして泣き止まそうとして、色々試したけどなかなか泣き止まなくて…。

私は疲れてココアでも飲もうかなって思ってゆうちゃんにも渡したら泣き止んで。
それからというもの、ゆうちゃんが泣いた時には必ずココアを渡すって事してたな…。


「あれから、ココア=ゆうちゃんだって思っちゃった!」

「ははっ、でもそれでココア飲むようになったな〜」

「ホント、懐かしいね!」


他愛の無い話をしながら教室につながる廊下を曲がろうとして足を止めた。

「凛月…?」

「……」

ゆうちゃんが驚いたけど気にする暇もなかった。

だって、一瞬しか見えなかったけど廊下の向こうには南と御守先輩が2人でいた。


「も〜!南今日先に学校行っちゃうんだから〜!」

先輩の猫なで声が鼻にかかる。
南の前だとあんな声出すんだ…。

「ごめんって!許してくれよー」

南が焦ったような話し方で御守先輩に謝る。

チラリと、2人の様子を穿った。

「……っ!」

今…御守先輩と目があった…?

気のせい…だよね?

「悪いと思ってるんだったら…キス、して…?」

そう言って先輩は南に顔を近づける。
見ちゃダメ…。見たら終わる。

「……っ」

「凛月、来て」



突然ゆうちゃんに手を引っ張られたかと思うと教室とは逆方向に向かって歩く。

もしかして…私の気持ち分かって…?




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