24歳、恋愛処女
「いえいえ。
では、次回はよろしくお願いします。
あと、ジムの話も」

「はい、わかりました」

店の前で別れて、タクシーに乗る。

荻原さんは絶対に私を先に帰らせる。
スマートにそういうことをやってのけるから、全然嫌みがないっていうか。

荻原さんに会うのは楽だ。

いままで、食事のことで仲良くなって、一緒に食べ歩きをする男がいなかった訳じゃない。
でも大抵、私のペースを乱される。
勝手に理想の自分を演じられるぶんにはまだ我慢ができたが、それを私にまで押しつけてこられて嫌だった。

荻原さんは最初のタクシー以来、そういうこと、ないから。
すごく、楽。

それに、一緒に行ってくれるおかげで、ひとりだと遠慮しがちな、今日みたいなお店も入れるし。
とってもいい人で、多分、松本課長と南谷さんのほかに打ち解けられた、珍しい男の人だと思う。

……まあ、松本課長たちは特殊、なんだけど。

 
でも、上機嫌になってた私はまだ、知らなかったのだ。
紹介してくれた、インストラクターの弟さんのおかげで、大変なことになるなんて。
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