24歳、恋愛処女
夜は松本課長とふたり、私のお気に入りの焼鳥屋。
注文がすむと飲み物を待ってるあいだに、松本課長はシャツの下につけていたネックレスから指環を抜くと、左手薬指にはめた。

「その、よかったんですか?
南谷さん」

「ああ、うん。
二村さんの相談に乗ってくるって云ったら、しっかり聞いてやってこい、だって」

照れたように笑うと、松本課長は届いたビールのジョッキに口を付けた。

……松本課長は、ゲイだ。
結婚してて、南谷さんが旦那さんだったりする。

近頃の世間は理解ムードを醸し出しているが、それでもまだまだ偏見のほうが強い。
もちろん、会社では隠してる。
私が知ったのはひょんなことからだったけど、別にこう、なんとも思わなかったし。
だからか、松本課長とは個人的に会うようになって、夫婦? 夫夫? ともに可愛がってもらってる。

「……で。
恋ってなんだって話だっけ?」

「あっ、えっと。
……はい」
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