黒猫の恋模様
音楽室の扉に手をかければギィっと音を立てながら開いた。
使われてない癖に掃除は続いているからか、
いつきてもこの教室に埃が舞っていることは無い。
さらに日当たりもいいとなれば、最高のサボり場所な訳で。



「…あの子、絶対何も知らない」



少しの沈黙の後にポツリと呟いた詩。
その目には大粒の涙が浮かんでいて、今にも溢れそうだ。



「だな。あの人もどんな心境で戻ってきたんだろーね」



問いかけに答えは返ってこなかった。
その代わりに、気付けば隣に詩がいてシャツの袖を掴んでいた。



「ねえ、凛も栄人も離れていかないよね…?」



いつの間にか零れ出した涙を反対の手で拭いながら
今までと同じように、何度も繰り返してきた言葉を伝える。



「俺も栄も、ずっとお前の味方だって言ってんだろ?
不安になるよーなことは、なんもねーよ」



安心したように目元を緩めた詩はコクリと一度だけ頷いた。

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