そのキスで、覚えさせて
蒼さんは半笑いのまま、口を閉じた。
そして、遥希はにこっと笑う。
そのわざとらしい笑顔、眩しすぎる。
やっぱり遥希はアイドルだ。
扉の入り口には、二人のスタッフが立っていた。
一人は女性で、遥希を見て頰を染める。
そんな彼女を見て、やっぱりいい気はしない。
そして、男性スタッフが少し困ったように遥希に告げた。
「その女性のご友人が、まだ待っているようですが」
どきりとした。
泉や瀬川さんのことだ。
このまま、遥希のことを知らずに穏便に済ませたいと思ってしまう。
泉の言葉が頭から離れないのだ。
だけど、遥希は容赦してくれない。
「連れてきてください」
スタッフに静かに告げた。
そして、スタッフが姿を消すと同時に、
「じゃ、俺は帰るねぇ」
蒼さんも出て行ってしまった。